島村楽器 札幌パルコ店 シマブロ

島村楽器 札幌パルコ店スタッフによるイベント情報やお知らせなどを発信するブログ(シマブロ)です。

【ドラムコーナーより番外編】ジルジャン工場見学レポート

ジルジャンシンバル工場を見学してきました

全道500万人のドラマーのみなさんこんにちは。島村楽器札幌パルコ店のトリヅカでございます。
残暑厳しい今年、いったいいつになったら涼しくなるのだ!と汗をかきかき日々過ごしていたわけですが、ここ数日あっという間に秋めいて参りました。朝晩など肌寒く感じる日もありますが、ドラマーのみなさんいかがお過ごしでしょうか。ライブやリハで汗をかいた後、夜風にあたって風邪などひかないように元気に叩き続けましょう。

さて、突然ですがワタクシ、この度アメリカはボストン近郊にあるジルジャンの工場を見学する機会に恵まれました。
今回、ドラマーみなさんの代表として訪れたつもりで、ジルジャン工場の様子、シンバルづくりの秘密、ジルジャンという会社のこと等をレポートしたいと思います。どうかご笑納いただけたらと思います。

いざ工場へ

ジルジャン工場見学レポート

ボストンは、松坂投手、田沢投手が在籍するレッドソックスの本拠地として有名な、(それだけじゃないですが)アメリカでも歴史の古い町です。ボストンのあるマサチューセッツ州をはじめとした周辺6州を「ニューイングランド地方」と呼びます。その名の通り、イギリスからの移民が最初に来た地方であったり、アメリカ独立のきっかけになったとか、そんな歴史のある町です。
北海道だと松前や函館がドンピシャな感じですし、本州だと、そうですねえ、長崎とか横浜とかにあたるんでしょうか。海に面した人口60万ほどの町です。歴史的な建造物と、近代的な高層ビルが同居する、少し不思議な町並みでもあります。
そんなボストンの中心部からハイウェイで2~30分ほどの場所にジルジャンの工場はあります。周囲は、基本的に森林だらけ。ところどころに大きな大きな家がありますが、あたりはとりあえず森です。ハイウェイから少し入った木立のなかにジルジャン工場はあります。

ジルジャン工場見学レポート

まずは小綺麗なオフィスが目に入ります。煙やら音がする、いわゆる工場然とした場所ではありません。
中に入ります。

ジルジャン工場見学レポート

先代社長のアーマンドのデスクがディスプレイされています。

ジルジャン工場見学レポート

さらに進むと、トラヴィスバーカー、ジンジャーベイカー、そしてリンゴスターのセットが展示してあります。

また、ジルジャン社がドラムセットシンバルをリリースする上で大きな功績があった、ジーンクルーパの名を冠した部屋もあります。

ジルジャン工場見学レポート

ジルジャン工場見学レポート

ジルジャン工場見学レポート

ジルジャン工場見学レポート

早速、社長のクレイギージルジャンさんから、ジルジャン社の成り立ちの説明を受けます。

ジルジャン工場見学レポート

ご先祖様はアメリカンドリームを志してアメリカに移住してきた後、キャンディ工場を経営していたこととか、
ファミリービジネスの会社としてはアメリカで一番古いこととか、実に興味深いお話が聞けました。
先ほどのドラムセットはもちろん、クリントン大統領からの誕生祝いのカード、チャーリーワッツからの直筆のお礼のカード、古いKやAのシンバル等、博物館と言っても良いような貴重なものばかりです。

ジルジャン工場見学レポート

ジルジャン工場見学レポート

いよいよシンバルづくりの秘密に迫る!?

さて、工場レポート、と行きたいところなんですが、工場内は写真はNGなのです。
ですから、シンバル作りの行程をご説明しましょう。
まず最初に、ハンドハンマーについての説明を受けました。

ジルジャンでは、基本的に全てのシリーズは、コンピューター制御のマシンでハンマー加工を行っているそうです。
古い時代のハンマーが展示してありましたが、それはずっしりと重いものでした。
人がハンマリングの作業を行った場合、シンバルの大きさにもよりますが、一枚につき45分ほども叩き続けなければなりません。
一日に10時間そんな作業をつづけたら、従業員の健康はどうなってしまうかわかりません、そして…
ボストンレッドソックスが負けた日は憂さ晴らしのために普段より強くハンマリングしてしまうし、
逆に勝った日は祝杯の二日酔いでハンマリングが弱くなったりしてしまう、まあ、私はヤンキースファンなのでそんなことはありませんが、と説明の方はニヤリとして説明してくれます。
要するに(要しなくてもお分かりかと思いますが)人が作業する事による誤差も防止することはもちろん、従業員の健康問題にまで気を配った方法であることがわかります。
AやK等のいわゆるキャストシンバルといわれるシンバルは、インゴットと呼ばれる金属の固まりが素材です。シンバルのサイズによって異なるのですが、厚さが5ミリから10ミリ、直径は15から20センチくらいの、ずっしりと重い金属のカタマリです。インゴット同士を当ててみると、ものすごく深みのある良い音(ベルサウンドと工場の方は言っていました)がします。
そしてZBT等のいわゆるシートシンバルは、シンバルの形にカットされて整形された状態で別の工場から運ばれてくるそうです。こちらは、まだこの状態では良い音はしません。
原料のコーナーには、シンバルを製造する上で出た削りカス、とか、おそらく検品でNGになったと思われるシンバル等も集めてあります。これらはもう一度溶かして使用するそうです。
溶かす、といえば、前述のインゴットを製造する、合金を配合する場所は、固くシャッターが下ろされていて、作業中の赤いランプが点灯しているときは、社長以下5人くらいのスタッフしか入れないそうです。説明してくれた方も入れないそうですし、もしここを見たいのなら入ってもいいけれど、絶対に帰れないだろう、ということでした。

オーブンで加熱

さて、インゴットは、オーブンと言われる熱を加える機械で熱します。
直径が10メートルくらいの円形のオーブンの中は、円周のレーンがゆっくり回っていて、レーンの中をインゴットが進んでいます。熱々のオーブンの中をインゴットが進む事によって段々と熱せられ、加工するのに最適な温度になるのです。

ジルジャン工場見学レポート

熱したインゴットはオーブンから取り出したあとすぐにローラーにかけて伸ばします。ローラーにかける工程は繰り返し行われるようです。ローラ-にかけたシンバルは、黒く鈍く光る金属板で、円形でもないいびつな形をしています。これらを自然冷却で冷やしていきます。
冷却用のラックに乗せられた金属板は、全くの平面で穴もないので、まさかこれがシンバルになるとは想像できないような状態です。金属板はプレスの機械にかけて、周縁のいびつな形の部分を切り取ります。先ほどのいびつだった金属板がきちんとした円形となり、またこの工程では同時にカップの部分,おおまかなボウのカーブを整形します。金属の固まりだったものが、ここまで来ると大分シンバルに近づきました。

レイジングとエッジ加工

次の工程はレイジングとエッジ加工です。
レイジングとは、シンバルの表面に溝を彫る作業です。図のような機械で、回転するシンバルに刃を押当てて溝を彫って行きます。機械とはいえ、刃を操作するハンドルに作業員の方がかなり力をいれているのが分かります。
シンバルは、ハンマリングの後はまだぐにゃぐにゃしたような状態だそうですが、ここで力を加える事により、形状が安定するそうです。一枚片面につきほんの数秒で作業は終わります。刃の当たるところから、鉛筆の削りかすのようなシンバルの削りカスが勢い良く出てきます。

ジルジャン工場見学レポート

レイジングの作業の方は、削り終わるとそのシンバルをスケールに乗せて重さを量り、削り足りないときはもう一度機械にかけています。そして次はエッジ加工。こちらも、ろくろ、のような回転する台の上に手作業でシンバルを載せ、エッジを削ります。

ベンディングとハンマリング

ここまでくると、大分シンバルっぽくなってきました。重要な作業が続きます。
シリーズにより行われない場合もあるのですが、ベンディングという工程では、一度形作られたシンバルを、プレス機のような機械にかけ、逆向きに反り返らせます。そしてもう一度正しい向きに直す、という作業。これは、もともと平面な板だったシンバルは、金属の特性としてもとに戻ろうとする力が働くため、せっかく整形したシンバルが反り返ってしまうことがあるそうです。それを防止する工程です。
そして重要なハンマリング。先述しましたが、ジルジャンではマシンハンマリングが基本となっています。シリーズによりマシンを使い分けているそうですが、Aや、シートシンバル等、比較的規則的なハンマリングパターンのシリーズは小刻みに打ち付けるようなマシンで叩いています。ハンマリング、といってもよくイメージされるような「ガンガンガン!」と叩いているのではなく、騒音もほとんどしません。
そして、K等、ランダムにハンマリングされているようなシリーズは、ロータリーハンマリングといって、回転するハンマーを押当てるような感じで、ハンマリングパターンを付けていました。

ジルジャン工場見学レポート

もちろん、ただ押当てているだけではなくて、コンピュータ制御によって押当てる強さや形がコントロールされた、たいへん高度な作業であるのは言うまでもありません。
レイジングとハンマリングは、シリーズやモデルによって前後したり、繰り返し行われることもあるようです。

いよいよ仕上げ

いよいよ仕上げの工程に移ります。
いわゆるブリリアント加工は、シンバルをバフがけ(磨く)ことによりあの輝きを得ています。この工程では、自動化された工程が印象的でした。まとめて置かれたシンバルを、ロボットアームが回転するテーブルに置き、テーブルの上では順々にバフがけされていきます。
バフがけが終わったシンバルは、ふたたびロボットアームがコンベアの上に置き、作業の方がコンベアの前で待ち構えています。シートシンバルは機械でのバフがけだけだそうなのですが、この日行われていたAカスタムをはじめキャストシンバルは、仕上げに人の手で磨き上げます。
高度に自動化された工程ですが、最後は人の手で磨き上げている、というところのギャップが面白く感じましたし、やはり人の手に勝るものは無い、という事なのかもしれません。
この後は表面にコーティングをします。スプレーのようにコーティング材を吹き付けた後、回転するレールに吊るされ、ゆっくりと回っていき、コーティング材を乾燥させます。こちらは回転するスピードがゆっくりなこともあって、少々のどかな感じもします。ロボットアームが忙しくバフがけをしている隣が、こののんびり見える工程なのもギャップが面白いところです。
最後にレーザーエッチングによる刻印と、スタンプの作業です。こちらもロボットアームが忙しく働いており、またレーザー刻印はシンバルに触れる事無く一瞬で刻印が終わります。
コンピューターに刻印パターンを登録すると、それに沿ってレーザー加工されます。以前はプレス等によって刻印していたのですが、サウンドへの影響も考慮して現在はレーザーによる加工を採用しているそうです。
同じ一角でロゴの印刷も行っており、スポンジのようなものを押当てて転写する仕組みになっています。

サウンドチェック

シンバルは、サウンドチェックを経て出荷されます。
工場内でも、チェックする部屋だけは防音が施されており、ここだけは特別な雰囲気でした。
サウンドチェックは、最後だけでなく、エッジを切ったり、レイジングの後等、完全に完成する前にも何回か行われています。一部の工程ではサンプルテスト(全数ではない)であったりもするようですが、最終的にはテスターさんが全て実際に叩いて(TUNER)と、(STANDARD)という2種類の基準のシンバルと比較し、その2枚の範囲内のものを選んでいます。
この最終段階に至るまでにチェックも行われているので、この段階でハネられるのはかなり少ないようですが、残念ながら基準外になってしまったものはもう一度溶かしてシンバルの原料になります。

そしてみなさんのもとへ

さあ、シンバルができあがりました!
最後の部屋には、以前は完成したシンバルがずらーっと並んでいて、それはそれは壮観だったそうですが、現在は完成されたシンバルはここで袋詰めされてすぐにセントルイスにある倉庫に運ばれていきます。
倉庫から、世界中からのオーダーに即対応し、我々のもとにも届けられる訳です。
ちょうどそのときもトラックが横付けされていて、積み込みをまっているところでした。
しかしここも、ただ袋詰めをしているわけではありません。
気温や湿度などによって、シンバルに袋の跡が着いてしまう事があったそうで、それについても改良が進められていたり、また以前は工場からはハダカで出荷して、倉庫で袋詰めをしていたそうですが、現在では、輸送中のキズ付き等を防止するため工場で袋詰めをして出荷をするようになったそうです。
工場見学はこれでおしまいです。

工場内をさらに見学

この後、シンバルがストックしてある倉庫を見せていただきました。

ジルジャン工場見学レポート

現行のものはもちろん、廃番品や、試作品もあります。
ここでは、アーティストが自分で使うものを選ぶこともあるそうです。何枚か、珍しいものを叩かせてもらいました。
そのほか、オフィス内の様子等をご紹介。

ジルジャン工場見学レポート

バディリッチのドラムセットです。本人が亡くなる直前まで使用していた3台のうち、一台がここにあります。病に倒れたバディリッチが、病床から先代社長のアーマンドジルジャンに託したものだそうです。

ジルジャン工場見学レポート

神保さんのメッセージ入りポスター
神保さんとジルジャン社のつながりの深さを感じさせるメッセージです。

ジルジャン工場見学レポート

スティーブガッドのグレッチのドラムセット。
これもお宝ですね。最近展示し始めたものだそうです。ヘッドに直筆サインも入っています。

話題の新製品gen16

gen16(ジェネレーション16)は、AE(アコースティックエレクトリック)シンバルという全く新しいコンセプトのシンバル。
小さい穴が開けられたシンバルのサウンドを、ピックアップで拾い、サウンドモジュールで変化させて出力します。
電子ドラムとの組み合わせがおもに想定されたモデルだと思いますが、電子ドラムとは違い実際に出た音を増幅しているので、強弱の表現があいまいだったり、弱いタッチに反応しない等の心配は無用になります。さまざまな音色、強弱の表現が可能になる、次世代のシンバルです。

ジルジャン工場見学レポート

シンバルをテストする部屋で、デモ演奏も聞かせて頂きました。

おしまいに

ジルジャンは今年で創業389年になるのですが、伝統を守りつつも、合理的に出来る所はきわめて合理的に行っている所は、伝統ある企業がアメリカ的な考え方をうまく取り入れて成功している好例なのかな、と思いました。
また、これほどの伝統がある会社ですら、常に新しい試みを行っている姿勢が、現在も多くのドラマーからの支持を得ているのだと改めて感じさせられました。
このようにさまざまな努力と工夫によって作り出されているジルジャンシンバル、改めて聞いてみると今までよりもっといいサウンドに聞こえてくるような気さえしてきます。みなさんも、ぜひ今まで以上にシンバルの音に耳を澄ませてみて下さい。
島村楽器札幌パルコ店、トリヅカがレポートいたしました。

もっとみる

© Shimamura Music All rights reserved.